標準報酬月額上限改定による健康保険料上限引き上げの可能性

10月15日に行われた社会保障審議会医療保険部会の資料(※)にて、
健康保険の標準報酬月額上限引き上げ案が提示されていました。




※【参考】第82回社会保障審議会医療保険部会 療養の範囲の適正化・負担の公平の確保について(PDF)

現状、第47等級121万円とされている標準報酬月額の上限を、
第51等級145万円まで新たに設けるという内容です。

標準報酬月額は健康保険組合や協会けんぽ、共済組合等に所属する者すべてに適応され、
仮に最高等級に該当する加入者は現状の保険料率が10%であれば、

(145万-121万)×10%÷2(労使折半)=1.2万円(/月)

となり、年間14.4万円の負担増になります。


この水準の給与所得者はボーナスを含めれば2000万円を超える為、
所得税率が33%帯以上の人が殆どでしょうから、
実質的な負担率は14.4万円×57%≒8.2万となります。


健康保険の上限は今までにも何度か改正されていて、
直近では平成6年が98万円、平成19年が121万円とされており、
145万円に改正されれば高所得層はここ20年で1.5倍に拡大されたことになります。

上限改正には健康保険法の改正が必要で、現行の上限改定ルールである

「最高等級に該当する被保険者の全被保険者に占める割合が1.5%を超える場合で
改定後の上限該当者が全体の1%を下回ってはならない」

を考えると、上限超過0.95%かつ改正後0.5%となる現状での145万円への改正は、
それなりに審議が必要になる者と思われます。

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岡山県総社市の医療費抑制施策 健康なら1万円給付制度について

今朝の日経新聞電子版を見ていたら、岡山県総社市の市長さんに対する
インタビューとして、健康保険に関する面白い施策が書かれていた為、
少しこの制度について考えてみようと思います。


【参考】
「健康な市民に現金、医療費抑制に一役」 片岡聡一・岡山県総社市長
(日経新聞電子版 2014/8/28)


内容を見ると、この市では1年間医療機関の保険診療履歴が無く、
特定健診を受診している国保加入世帯について、
1万円がキャッシュバックされる仕組みを昨年導入したとの事。

もう少し詳しく内容を見る為に当該市のHPを確認すると、
該当するページがありました。

【参考】健康で1万円キャッシュバック(岡山県総社市保険年金係)


受取れる要件は以下のように記載されています。

1.平成25年4月1日から平成26年3月31日までの期間で、
  被保険者が保険診療を受けなかった世帯
2.(1)の期間で、40歳以上の被保険者(特定健康診査の対象者)がいるときは、
  対象者全員が特定健康診査を受けた世帯
3.国民健康保険税を完納している世帯



となりますから、世帯全員が40歳未満の場合は特定健康診査(※)非対象者であれば
健診を受けずに給付金を受領可能とも言えます。

国保特定健康診査(メタボ健診:PDF


もちろんHPにあるように、
1年以上保険診療を受けていない世帯の特定健康診査の受診率が約8%
という低さを、ある程度のインセンティブで向上させる意味合いもある為、
単なる給付金とは異なる背景があります。


そもそも国民健康保険加入者の多くは自営業者です。
自営業者はサラリーマンなどの被用者と異なり、
ほぼ強制的に定期で行われる健康診断が無い事が多く、
健康管理の問題点を喚起する為にこの制度を導入した意義は大きいと思います。

また、1万円という金額も世帯単位での給付であり、
仮に夫婦がそれぞれ40歳以上の世帯とすれば、特定健康診査の健診費用1,400円(※)
が2人分かかる事で、差し引き7,200円程度の手取りでしかありませんから、
これが直ちに医療機関の受信拒否につながるリスクも低いと言えます。

検診・健診の一覧(国保特定健康診査(総社市):PDF


加えて、健康診断の受診履歴の低さは厚生労働省の国民生活基礎調査(以下表)を見ると、
20代から40代で多い回答が、「時間が取れない」という理由以外に、
「めんどうだから」「費用が掛かるから」という回答も多く、
費用の実質負担と足代のプラスが加算された1万円の給付がインセンティブとして
有効に働く可能性は十分に存在する事になります。


【参考】平成25年 国民生活基礎調査の概況
Ⅲ世帯員の健康状況 9.健診(健康診断や健康診査)や人間ドックの受診状況


健診を定期で受けていれば重篤な病気を見逃すリスクも全体では下がり、
結果的に医療費が抑制されると考えるのは病気の予防として正しく、
この施策は財源確保に苦しむ各公的医療保険の運営に少なからず
影響を与えることになると思います。

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公的医療保険の高額療養費自己負担限度額の見直しについて

最近では認知度がそれなりに上がってきた公的医療保険の高額療養費制度ですが、
その負担限度額が改正されている事をご存知でしょうか?

ここでは高額療養費制度自体の簡単な解説と、平成27年1月に施行される
健康保険法施行令の改正内容について触れておこうと思います。


<<高額療養費とは>>

高額療養費制度とは、同一月中(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が
高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が払い戻される制度の事で、
標準的な所得の家庭であれば、70歳未満で医療費が3割負担の人なら80,100円(※)を
超えてくる場合、その対象範囲となります。

※年齢、所得水準、実際に掛かった医療費等により基準は異なる


ただし、1か月以内の全ての医療費が対象となるわけではなく、
医療機関ごとに区分したり、同一医療機関でも通院と入院で分けなければならなず、
70歳未満の場合はその分別した医療機関区分ごとの自己負担額(窓口支払い分)が
21,000円を超えていなければ合算できない等、それなりに注意点もあるのがこの制度の特徴です。

※同月中に同一保険加入者(例えば協会けんぽ加入被保険者(親)と
 その被扶養者(子供)等)の医療費は合算可能(世帯合算)
※処方箋を院外の薬局に持ち込み、薬代を支払った場合は処方箋を交付した
 医療機関の医療費として合算可能



言葉だけだと分かりずらいので例を示しておきます。


例)被保険者A、被扶養者B(70歳未満かつ標準所得世帯)

8月1日から8月31日までに掛かった医療機関と医療費

※金額は自己負担額(3割負担)


■被保険者A
<A病院>
・入院費(差額ベット代や食事代等、対象外費用を除く) 15万円
・通院費 2万円(21,000円未満の為、合算不可)

<B病院>
・通院費 3万円(合算可)

■被扶養者B
<C診療所>
・通院 3万円(合算可)

総額:15万+3万+3万=21万円


この21万円が計算の対象とされます。
ちなみに、実際に払い戻される額は以下の計算式に因ります。

【標準所得世帯(一般)の場合】80,100+(総医療費-267,000)×1%


総医療費は自分で支払った3割負担分と、各公的保険(協会けんぽ等)から支払われた
7割分を足した計10割分の医療費の事であり、上記のケースを当てはめると、

21万円(3割負担分)
49万円(健保等7割負担分)
--------
70万円(総医療費)


となり、高額療養費制度の自己負担限度額は、

80,100円+(700,000-267,000)×1%=84,430円

であり、払い戻される金額は、

210,000-84,430円=125,570円

と計算される事になります。


ちなみに今回の改正では、この計算式の所得基準と限度額の見直しが行われます。
今度はその点について詳しく見ていきましょう。



<<自己負担限度額の見直しに関する改正点について>>

本改正で対象となるのは70歳未満の加入者です。
つまり、主に現役所得者が影響を受ける中心層となります。

具体的な区分細分化は以下の資料を見てみましょう。


※健康保険(組合健保・協会けんぽ)と国民健康保険で基準が異なります


協会けんぽ(千葉)(PDF)の資料から抜粋



国保(島根県出雲市)(PDF)の資料から抜粋


左が変更前の基準、右が変更後の基準です。



健保は標準報酬月額、国保は旧ただし書き所得がボーダーラインのベースとなります。

標準報酬月額に用いられる報酬とは、会社から支払われる基本給に
各種手当(通勤手当・残業手当等)を加えたもので、
臨時に支払われるものや賞与等を除いたものを言います。
(概ね、4-6月に支給される給与等を平均した額で決定)

その報酬が標準報酬月額表(※)と照らし合わせて幾らになるかで
基準額が決定されますが、改正後の標準報酬月額の枠組みで言うと、
実際のボーダーは以下の通りになります。


※【参考】標準報酬月額表



【改正後の高額療養費所得基準として用いられる標準報酬月額と標準報酬額のボーダー】

「旧・上位所得者A」83万円以上(81万円以上)

「旧・上位所得者B」53万~79万円(51.5万以上~81万円未満)

「旧・一般所得者A」28万~50万円(27万以上~51.5万円未満)

「旧・一般所得者B」26万円以下(27万円未満)


※A,Bは便宜的に付記


と読み替える事が出来ます。

この中で改正後と制度を比べて負担限度額が全く変わらないのは、
住民税非課税世帯を除けば「旧・一般所得者A」のみとなります。

旧・一般所得者B」は負担限度額が引き下がり、
上位所得者はA,Bともに引き上げとなっている事が上記表を見ても
お分かり頂けるかと思います。


例えば「旧・上位所得者A」の人が医療費100万円(3割負担で支払額30万円)の
治療費が掛かった場合で現在と改正後を比べると、


■改正前 150,000+(1,000,000-500,000)×1%=155,000円

■改正後 252,600+(1,000,000-842,000)×1%=254,180円

負担差額:254,180円-155,000円=99,180円


となり、約10万円も自己負担限度額が引き上がる事になります。


国保の場合は「旧ただし書き所得」での計算となります。

旧ただし書き所得の計算は、例えば給与所得の場合なら給与所得控除を差し引き、
事業所得の場合は青色専従者給与額等を差し引いた残りから33万円(基礎控除)を
引いた数字が該当します。(※社会保険料等の控除は出来ない)

これは国民健康保険料の算定基礎となる所得と同じものです。
事業所得者の場合、旧ただし書き所得で600万円のボーダーにいる人は
少し気を付けた方が良いと言えるでしょう。

自己負担額の差を改正前と後で計算すると、


・旧ただし書き所得601万円(医療費は上記と同様100万円とする)

■改正前 150,000+(1,000,000-500,000)×1%=155,000円

■改正後 167,400+(1,000,000-558,000)×1%=171,820円

負担差額:171,820円-155,000円=16,820円


となり、多少負担が増加する事になります。



今回の改正は来年の1月から施行ですから、
本年中に"限度額適用認定証"等を発行して貰うよう役所に尋ねた場合、
改正前と後で限度額が変更になる点は注意しておきましょう。

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ライフネット生命が医療保険や定期死亡保険料値下げ

昨年、アイリオ生命が楽天の完全子会社化となり、
定期保険や医療保険分野で値下げ攻勢を掛ける中、
他社もそれに追随するかのように新しい保険の発売や保険料の値下げが
頻繁に行われていましたが、ライフネット生命もここにきて値下げと
新型保険の投入をする決断に至ったようです。


ライフネット生命保険 主力2商品見直し
開業後初の保険料引き下げで業界最安水準の保険料へ
女性向け終身医療保険も新たに発売(2014年4月1日)

ライフネット生命プレスリリース
http://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/2014/5315.html



業界最安水準との事ですから、具体的に比べてみましょう。
比較するのは定期死亡保険と医療保険です。

定期死亡保険はオリックス生命の「Bridge(ブリッジ)」、楽天生命の「ラブ」を
比較対象に選んでいます。

同じく、医療保険はメディケア生命の「メディフィットA(エース)」、
楽天生命の「スマート」を比較対象にしました。

ライフネットの資料ではまだ細かい料金設定のシミュレーションができませんが、
開示されてる範囲で比較しています。


<定期死亡保険>

ライフネット料金比較定期死亡保険

<終身医療保険(終身払い)>

ライフネット料金比較終身医療保険

※ライフネット「新じぶんへの保険(エコノミーコース)」は先進医療特約無し、
 5日以内の入院でも5日分支払い
※楽天生命「スマート」は先進医療特約付き
※メディケア生命「メディフィットA(エース)Ⅰ型」は先進医療特約(110円)を付けて計算



定期死亡保険は良く見ると女性の20歳では旧料金よりも上がっており、
50歳代の男性が他社よりも高い金額のままであるものの、
コア層とする"20から40代の子育て世代"に対しては十分に訴求力のある
料金改定になっている事が分かります。

医療保険については大幅に減額されており、
業界最低水準をはっきりと意識した価格設定となっています。

ただし、ライフネット生命はエコノミーコースだと先進医療特約が
付加されていない反面、入院1日でも5日分まで支払われる保障内容と
なっているなど、単純には比較できません。

仮に先進医療特約分を100円程度として考慮した場合は、
30,40代の男女でメディケア生命のメディフィットAに
実質的には料金で差を付けられている事になりますが、
入院時の5日最低保障をどう考えるかで変わって来る事でしょう。


いずれにしても、ネット保険は安いというイメージ戦略を打っている
ライフネット自体の料金体系がネット生保業界において実際には高い水準という
ある意味矛盾した逆転現象は、今回の価格改定によって解消されるのではと考えます。

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専業主婦の健康保険変更漏れ 医療費払戻しの時効に注意

今日の日経新聞電子版にこんな記事が出ていました。


専業主婦が陥る「知らぬ間に年金未納」のワナ
パート収入増や夫の定年再雇用に注意

(中略)過去のパート勤務記録から3年前の変更漏れを指摘されたのだ。
 年金の第3号になるには会社員または公務員に扶養されていることが条件で、
原則健康保険の扶養認定基準で判断する。

佐藤さんは3年前から自営業者と同じ第1号と見なされ、
国民年金保険料の未納を指摘された。

遡って払った国民健康保険料と健保組合が負担した医療費の返還もあわせ、
追加負担は250万円に上った



この方は夫の健保の扶養に入るため、年収130万円未満という基準は守っていたものの、
会社が規定する基準(3カ月連続して10万8,333円を超える)に引っ掛かった為、
上記のような状態になってしまったようですが、
それだけで250万円という大金を支払えと言われてしまったら
途方に暮れてしまうかもしれません。

しかし、この金額は内訳を見て知っておかなければならない事があります。


まず未納となっている3年分の国民年金保険料です。
現在はひと月当たり概ね1万5千円ですから、年間18万円、3年で54万円です。

また、国民健康保険料は東京都特別区の平均的な水準と、
この方(40歳以上とする)の年収が130万円とするならば
年間8万円、3年で24万円です。

3年前、既に健保組合から脱退している事になっている履歴がありますので、
遡って国民健康保険に加入するにはその分の保険料は支払う必要がありますから、
合計78万円は確実に出て行ってしまうお金です。

ですが、この方は"健保組合が負担した医療費の返還"も含めて250万円となっています。
先程の金額から差し引くと、172万円もの金額を健康保険組合に支払っている事になります。

これは何故そうなるのでしょう?


みなさんが普段何気なくやっている健康保険証の提示、
これは、自分がどの健康保険制度に加入し、
どこから保険給付が支払われるかを伝える為のものです。

俗に言う3割負担というのは、患者が3割・健保が7割を負担することで
医療を受けられるようにする仕組みになっていますので、
この方は本来、夫の健保組合から3年前に脱退し、
その時点で国民健康保険に加入してそちらの健康保険証を提示し、
国保から7割分の医療費を給付してもらう必要があった為、
その3年間に健保が支払った医療費の返還として172万円の請求を受けてしまったわけです。

しかしこの場合、国保に保険料を納めて3年前に遡及して加入している事になりますので、
その間に支払った医療費の7割は国保が本来負担すべきものですから、
国保にその分の払戻請求が出来なくてはおかしい事になります。

実際、この医療費の払い戻しの請求は可能です
この点が上記の記事には書かれていない事なのです。

ただし、注意点があります。


医療費の払い戻しの請求は時効が存在します。(※)

多くは診療を受けた日の翌日、或いは翌月を起算日として
そこから2年間(又は5年)に限定されます。

ですから、この方の場合は概ね3年前から2年前の間に支払った医療費分は
自分で負担する必要が出てきます。

とは言え、2年前から現在までの分は国保から給付が受けられる可能性がありますから、
172万円全額が自己負担となる可能性は低いのではと思います。
(この辺りは記事内のケースについて詳細が書かれていないので不明)


同じようなケースに該当する方は早目に地元の国民健康保険課
又は健保組合・健保協会にお問い合わせください。



医療費の返還について(糸島市)

医療証をお持ちの方が医療費の払い戻し申請をされる際の期限について(東大阪市)

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プロフィール

楽天家業

Author:楽天家業

 大学在学中から事業でお金を貯め、それを元手に卒業後は個人トレーダーとして生計を立てていました。(現在はトレード業務一部復活)

 2008年のリーマンショック時に信用取引による過剰リスク状態で惨敗。そんな手痛い経験もあり、このままの人生で良いのかと自分を見つめ直し、同年からウェブサイトの作成業務、2009年からは独立系FPとして相談業務を行うため、自分の経験を活かして日夜、ファイナンシャルプランナーの分野で活動を行っています。

<略年表>
2009年9月AFP登録
2011年7月CFP登録

 現在、主にFP法人様や執筆関連でお仕事承っております。

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 上場と言う華々しさに至るまでの苦難の道のりを是非ご覧いただきたいと思います。

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