会社員の妻が130万円以上働くのは本当に損なのか?

ある程度事情が分かっていて結論だけ知りたい方は、
 一番下の画像だけ見て頂ければお分かり頂けます。
 また、ここに書かれている事は平成23年4月時点の法令に基づいています。



103万円、あるいは130万円の壁。

会社員の妻であれば一度はお聞きになった事があると思います。


・税金がかからない?

・配偶者控除が受けられる?或いは受けられなくなる?

・健康保険料と国民年金保険料が新たにかかる?



理由は様々ですが、基本的には103万円を超えないように、
或いは130万円を超えないように働いているのが現状かと思います。


子供が小さい内はそれでも良いかもしれませんが、
子供が大きくなってもうすぐ大学受験を控えている時期、
住宅ローンの返済もあり、夫の年収も頭打ち。

今後の学費等の出費を考えると少し多めに働いておきたい。

そんな中で壁となるのが130万円の壁です。


所で130万円の壁とは何でしょうか?

これは、130万円以上になると妻は夫の健康保険や年金の扶養扱いから外れ、
自分で健康保険料や国民年金の支払いをしなければいけなくなる金額です。


例えば130万円ギリギリで働いた人と超えてしまった人、
実際にどの程度の支払い差額が出るのでしょうか?
具体的に計算してみましょう。


なお、収入は全て一カ所から受け取る給与収入であり、
それ以外の所得は無いものとします。

また、扶養認定は130万円未満ですから、本来なら130万円ちょうどはアウトですが、
ここでは計算の便宜上130万円までは扶養内とします。

加えて、扶養認定には被保険者の年収の概ね2分の1である事、
或いは、被扶養者自身の労働時間が正社員の正規労働時間の4分の3未満を
満たしている等他にも条件がありますが、ここでは省きます。


各収入別の合計手取り表は一番下に掲載



妻の年齢:45歳
給与収入:130万円
給与所得控除:65万円
基礎控除(所得税):38万円
基礎控除(住民税):33万円
均等割(住民税):4,000円
住民税の人的控除の差:(38万円-33万円)×5%=2,500円


所得税:(130万円-65万円-38万円)×5%=13,500円
住民税:(130万円-65万円-33万円)×10%+4,000-2,500円=33,500円

税額合計:47,000円


手取り:130万円-47,000円=1,253,000円・・・A



給与収入:131万円
給与所得控除:65万円
基礎控除(所得税):38万円
基礎控除(住民税):33万円
均等割(住民税):4,000円
住民税の人的控除の差:(38万円-33万円)×5%=2,500円

国民健康保険料(年):(131万円-65万円-33万円)×(1.96%+6.13%+1.48%)+53,100円=84,681円
国民年金保険料(年):15,020円×12か月=180,240円

社会保険料総額:264,921円

※国民健康保険料算定には東京都中野区の料率を使用



所得税:(131万円-65万円-38万円-264,921円)×5%=754円
住民税:(131万円-65万円-33万円-264,921円)×10%+4,000-2,500円=8,008円

税額合計:754円+8,008円=8,762円


手取り:130万円-264,921円-8,762円=1,036,317円・・・B


手取り差額:A-B=1,253,000-1,036,317=216,683円


となりました。


収入は1万円の差ですが、
手取りは約22万円の差が出てしまいます。

これがいわゆる130万円の壁という物です。

仮にこの壁を破ろうとするなら、
夫に加算されている配偶者特別控除分で得られる16,500円の税額還付も含め、
妻の年収が160万円は無いと厳しいという結果になります。

これが世間でよく言われている160万円以上稼ぐなら
どれだけ稼いでもいいという年収のラインです。


しかし、これはあくまでも「国民健康保険と国民年金」になんの対策もせず加入した場合です。


例えば国民年金の付加年金を利用したらどうでしょう?

付加年金とは、月額400円の掛け金で将来の年金受取額が「年額200円×掛けた月数」分だけ増えるものです。
例えば、12カ月×400円=4,800円の掛け金で、200円×12=2,400円が年間の受取額として
増加する事になります。

つまり、年金を65歳から2年間受け取れば回収できる掛け金というお得な制度だったりするわけです。

これを利用し、将来女性の0歳児の平均余命である86歳まで生きたら、
最終的な受取額はどう変化するでしょうか?

年金の受取期間は21年間です。
年額2,400円増えるわけですから、
21×2,400円=50,400円の手取り増加です。

しかし、先ほど計算した手取り差額は22万円です。
これではちょっと厳しそうです。
しかも、付加年金はお得なのですが、額が決まっているので
将来のインフレに対応していない金額の決まっている部分です。(今後はわかりません)
これだけでは減少部分を補填するには弱すぎます。


では、追加で確定拠出年金に加入したらどうでしょうか。
確定拠出年金は運用次第で将来の受取年金額が変動する事と、
口座維持手数料や将来年金や一時金で受け取る時に受取手数料が掛るものの、
掛け金は全額所得控除が受けられる為、仮に131万円の人が全額所得控除を受けた場合、
所得税と住民税で徴収されている8,042円は返ってくる事になります。

しかし、これだけではまだ足りません。


では発想を変えて国民健康保険と国民年金ではなく、
健康保険と厚生年金に加入したらどうなるでしょう?


ここでは、全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)に加入する場合を考えます。


給与収入:131万円
給与所得控除:65万円
基礎控除(所得税):38万円
基礎控除(住民税):33万円
均等割(住民税):4,000円
住民税の人的控除の差:(38万円-33万円)×5%=2,500円

協会けんぽ保険料(年):6,044円×12か月= 72,528円
 厚生年金保険料(年):8,831円×12か月=105,972円

社会保険料総額:178,500円



所得税:(131万円-65万円-38万円-178,500円)×5%=5,075円
住民税:(131万円-65万円-33万円-178,500円)×10%+4,000-2,500円=16,650円

税額合計:5,075円+16,650円=21,725円


手取り:131万-178,500-21,725円=1,109,775円・・・C
手取り差額:A-C=1,253,000-1,109,775円=143,225円

となりました。


しかし、厚生年金の事を忘れてはいけません

仮に将来老齢厚生年金の受取が65歳からだったとします。
先ほどの付加年金の計算と同様、86歳まで受給できるとします。

12か月の掛け金で将来受け取れる年金額を現在の計算式から求めると、
131万円の平均標準報酬月額を11万円と仮定すれば、

110,000円×(5.769÷1,000)×12カ月×0.985×1.031×21年間=162,401円


となり、手取り差額143,225円を19,176円上回る事になる為、
実質的には現在の保険料負担は将来の受取年金額の増加分で相殺される事になります。


しかし、これには少し注意点があって、


・夫が先に亡くなった場合、夫の遺族厚生年金を受け取ると妻の老齢厚生年金はそのまま受け取れるが、
 その分夫の遺族厚生年金が減額される為、受け取れる金額に変化がない

・そもそも86歳まで受け取れるとは限らない


というものがあります。


しかし、年金額自体は国民年金の付加年金と異なり、
社会の情勢に合わせて調整が取られる為その点は安心です。

また、自分で個人型の確定拠出年金に加入(※)したり、
所得税の申告義務範囲外の20万円まで副業で稼いだり、
株式の損益通算を所得を気にせず行ったりと
制限が取り払われるので色々と稼ぐことについて試す事も出来ると思います。


枠で納めて面倒を嫌うか、
枠外で働いて色々と人生チャレンジするか、
その人次第だと思います。


※勤務先がパート等へ企業年金の加入を認めている場合を除く


※クリックで大きくなります。




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こんにちは

綺麗にまとめられていて勉強になります。
我が家も130万円の壁は超えないようにしています。
ここにはカウントされていないようですが、夫側に配偶者に対する手当の支給も130万円が壁のところが多く(これは会社によって違う)、これがばかにならないという事情の方もおられると思います。

たった1万円でただけで損という話ばかりが先行して、このエントリーのような広い目線まで意識している人が少ないとは思います。
我が家も現実を踏まえれば130万円の壁を超えるには相当な覚悟がいるなと思っています。
その中で工夫することに楽しみがあるという感覚すらあります。

No title

コメントありがとうございます。

家族手当については他の過去記事、

「配偶者控除の存在は本当に女性の労働環境に影響を与えているのか」
http://fpdiary.blog23.fc2.com/blog-entry-339.html

家族手当を導入している企業の中でも、配偶者の制限条件として全体の62%が、
”所得税法上の控除対象となる配偶者”と規定している

としてまとめておりますのでそちらの方もお読み頂ければと思います。

働く事は確かに金銭的な面も多い所ですが、
そもそも働く楽しみ、その意義までしっかりと考え、
人生を少しでも後悔なく過ごすことまで考えた方が良いと思っています。

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楽天家業

Author:楽天家業

 大学在学中から事業でお金を貯め、それを元手に卒業後は個人トレーダーとして生計を立てていました。(現在はトレード業務一部復活)

 2008年のリーマンショック時に信用取引による過剰リスク状態で惨敗。そんな手痛い経験もあり、このままの人生で良いのかと自分を見つめ直し、同年からウェブサイトの作成業務、2009年からは独立系FPとして相談業務を行うため、自分の経験を活かして日夜、ファイナンシャルプランナーの分野で活動を行っています。

<略年表>
2009年9月AFP登録
2011年7月CFP登録

 現在、主にFP法人様や執筆関連でお仕事承っております。

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 上場と言う華々しさに至るまでの苦難の道のりを是非ご覧いただきたいと思います。

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