週20時間弱の非正規雇用労働者(パート等)が厚生年金に加入した場合の試算

最近なにかと話題の年金問題。
受給開始年齢の引き上げや、いわゆるサラリーマンの専業主婦である
第3号被保険者制度廃止まで検討されるなど、
将来の年金財源確保と受給権者の保護のバランスを保つ為に、
様々な議論がなされています。


その中で、将来の受取年金額不足や保険料の徴収漏れを防ぐことを目的として
現在論議されているのが、「週の所定労働時間が20時間以上30時間未満」である
今までは厚生年金の強制適用対象ではなかった労働者にまで
加入条件を引き下げようというお話です。


現在は概ね正社員の4分の3の労働時間・勤務日数であれば
厚生年金の強制適用事業所に勤めていても加入義務はありませんでした。
正社員の週の所定労働時間は概ね40時間程度ですから、
30時間未満の労働者に関しては雇用者は加入させる必要が無かったわけです。


この為、サラリーマン等第2号被保険者の配偶者は健康保険と年金に関して
扶養に入る事を目的とし、30時間未満の範囲においてパート勤務する事で
第3号被保険者になるように、労働時間を調整する事が常態化しています。

また、逆に単身のフリーターや契約社員等非正規雇用の人は30時間以上働くことによって
その資格を得、会社側が適性に処理してくれればという条件付きで
厚生年金に加入しているケースがあるわけです。


そこで、第3号被保険者、単身の非正規雇用労働者をケースに、
「週20時間以上」へ基準が引き下げられたと仮定した場合、
どのように支払総額、将来年金額が変化するかを試算してみました。



<共通の条件>

・保険料支払い期間を1年とし、将来の年金額を試算します

・国民年金には付加年金制度がありますので、それを試算に組み入れ、
 厚生年金加入時との差額を計算する事とします

・生涯の受取期間の計算には簡易生命表(※1)を用いて
 男女の平均余命を算出し、受取総額を求めることとします

・厚生年金、健康保険、国民年金の各保険料は平成23年10月時点の金額(※2)
 を用いることとします。対象地域は東京都中野区です。
 (注:特別区国民健康保険の激変緩和措置を考慮しません)

・第3号被保険者は女性の場合のみ試算します




<ケースA>

性別:女性(単身・派遣社員)30歳
労働時間:週28時間(時給1300円)
月収:16万円(交通費込)
給与所得控除後の金額:115万
標準報酬月額:160,000円
65歳時の平均余命:24年


【年金保険料】(1年辺り)

国民年金+付加年金 (15,020円+400円)×12か月=185,040円
厚生年金 13,129円×12か月=157,548円

保険料差額:27,492円


【生涯の受取年金差額】(平均余命で計算。基礎年金部分はほぼ同額の為除外)

付加年金 2,400円×24年=57,600円
厚生年金 160,000円×5.769÷1,000×12×1.031×0.985×24≒269,965円

受取年金差額:厚生年金-付加年金=212,365円


【健康保険料】

国民健康保険 (1,150,000-330,000)×8.09%+39,900円=106,238円
協会けんぽ 7,584円×12か月=90,408円

保険料差額:106,238-90,408=15,830円


【受取差額合計】

年金保険料差額+生涯の受取年金差額+健康保険料差額

=27,492円+212,365円+15,830円

255,687円






<ケースB>

性別:女性(第3号被保険者・パート勤務)45歳
労働時間:週22時間(時給900円)
月収:9万円(交通費込)
給与所得控除後の金額:38万
標準報酬月額:88,000円(健康保険)98,000円(年金)
65歳時の平均余命:24年


【年金保険料】(1年辺り)

国民年金+付加年金 0円 (第3号被保険者の為)
厚生年金 7,868円×12か月=94,416円

保険料差額:-94,416円


【生涯の受取年金差額】(平均余命で計算。基礎年金部分はほぼ同額の為除外)

付加年金 0円 (第3号被保険者の為) 
厚生年金 98,000×5.769÷1,000×12×1.031×0.985×24≒165,354円

受取年金差額:165,354円


【健康保険料】

国民健康保険 0円 (第3号被保険者の為)
協会けんぽ 4,835円×12か月=58,020円

保険料差額:-58,020円


【受取差額合計】

年金保険料差額+生涯の受取年金差額+健康保険料差額

=-94,416円+165,354-58,020円

12,918円






<ケースC>

性別:男性(単身・派遣社員)30歳
労働時間:週28時間(時給1500円)
月収:19万円(交通費込)
給与所得控除後の金額:135万
標準報酬月額:190,000円
65歳時の平均余命:19年


【年金保険料】(1年辺り)

国民年金+付加年金 (15,020円+400円)×12か月=185,040円
厚生年金 15,591円×12か月=187,092円

保険料差額:-2,052円


【生涯の受取年金差額】(平均余命で計算。基礎年金部分はほぼ同額の為除外)

付加年金 2,400円×19年=45,600円
厚生年金 190,000円×5.769÷1,000×12×1.031×0.985×19≒253,795円

受取年金差額:厚生年金-付加年金=208,195円


【健康保険料】

国民健康保険 (1,350,000-330,000)×8.09%+39,900円=122,418円
協会けんぽ 9,006円×12か月=108,072円

保険料差額:122,418-108,072=14,346円


【受取差額合計】

年金保険料差額+生涯の受取年金差額+健康保険料差額

=-2,052円+208,195円+14,346円

220,489円






<ケースD>

性別:男性(単身・アルバイト)25歳
労働時間:週28時間(時給900円)
月収:11万円(交通費込)
給与所得控除後の金額:66万
標準報酬月額:110,000円
65歳時の平均余命:19年


【年金保険料】(1年辺り)

国民年金+付加年金 (15,020円+400円)×12か月=185,040円
厚生年金 9,026円×12か月=108,312円

保険料差額:76,728円


【生涯の受取年金差額】(平均余命で計算。基礎年金部分はほぼ同額の為除外)

付加年金 2,400円×19年=45,600円
厚生年金 110,000円×5.769÷1,000×12×1.031×0.985×19≒146,934円

受取年金差額:厚生年金-付加年金=101,334円


【健康保険料】

国民健康保険 (660,000-330,000)×8.09%+39,900円=66,597円
協会けんぽ 5,214円×12か月=62,568円

保険料差額:66,597-62,568=4,029円


【受取差額合計】

年金保険料差額+生涯の受取年金差額+健康保険料差額

=76,728円+101,334円+4,029円

182,091円




以上のようになりました。

基本的には国民年金にそのまま加入するよりは
厚生年金に加入した方が最終的な生涯の手取り総額は増えることになります。


しかし、これは厚生年金が労使折半である事が主因です。

この為、小さい事業所の場合は保険料負担が増加する事で経営が圧迫されないように
賃金額を抑えて募集を掛けることも考えられます。

将来の年金が増えても働く場所が無くなったり、
賃金が減少する可能性もある。


そんな年金以外の問題も考えながら考えなければならない難しさが
年金問題にはあるのです。



【参考資料】
※1 「厚生労働省 日本人の平均余命 平成21年簡易生命表」
※2 「全国健康保険協会健康保険東京支部 健康保険・厚生年金保険の保険料額表(平成23年10月納付分)」
※3 「平成23年度 特別区国民健康保険保険料一覧表」

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No title

事業所Aで3時間働き、事業所Bで3時間働く。という場合厚生年金はどうなるのかな。

事業所Cで3時間働く契約を2枚作るみたいなことがされる場合もあるのだろうか?

Re: No title

> 事業所Aで3時間働き、事業所Bで3時間働く。という場合厚生年金はどうなるのかな。
>
> 事業所Cで3時間働く契約を2枚作るみたいなことがされる場合もあるのだろうか?



社会保険労務士では無いのであくまでも私見範囲でお答え致します。


例えば甲法人のA事業所とB事業所で3時間働く、という場合で
所属先(雇用主)がA法人、勤務先がA又はB事業所という形であれば
A法人との雇用関係自体は変更がありませんから合算した数字となります。

また、乙法人と丙法人に同時に常勤契約がなされていれば、
それぞれの法人が納付義務対象者(基本的には報酬月額ごとに按分負担)となりますが、
ご質問のように、2つの適用事業所に常勤勤務しているとしても、
それぞれが正社員の所定労働時間・勤務日数の概ね4分の3未満の範囲内で
雇用契約が結ばれている場合、各事業所には加入させる義務が
発生しないものと思われます。


2点目のご質問の、同じ事業所で2枚の労働契約というのは資格取得逃れとして
日本年金機構等関係当局から是正勧告を受ける可能性があります。


私からは以上です。

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楽天家業

Author:楽天家業

 大学在学中から事業でお金を貯め、それを元手に卒業後は個人トレーダーとして生計を立てていました。(現在はトレード業務一部復活)

 2008年のリーマンショック時に信用取引による過剰リスク状態で惨敗。そんな手痛い経験もあり、このままの人生で良いのかと自分を見つめ直し、同年からウェブサイトの作成業務、2009年からは独立系FPとして相談業務を行うため、自分の経験を活かして日夜、ファイナンシャルプランナーの分野で活動を行っています。

<略年表>
2009年9月AFP登録
2011年7月CFP登録

 現在、主にFP法人様や執筆関連でお仕事承っております。

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 上場と言う華々しさに至るまでの苦難の道のりを是非ご覧いただきたいと思います。

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