確定拠出年金の加入対象者に専業主婦や公務員も?

日経新聞で以下のような記事が取り上げられていました。



「確定拠出年金、専業主婦も対象に 政府が検討、上限額も上げ」日本経済新聞

政府は働く個人が自ら運用方法を決める確定拠出年金(日本版401k)を拡充する方向で検討に入った。
専業主婦や公務員を対象に加えることや、個人で拠出できる額の上限の引き上げを検討する。
家計資産を運用に向かわせ、資金が企業に流れる好循環を生み出す狙いがある。
具体的な制度設計を年央に固める日本再生戦略に盛り込む。



そもそも確定拠出年金とはなんでしょうか?

この制度の目的は確定拠出年金法に記載があります。


確定拠出年金法 第一条(目的)

この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、
個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、
高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、
確定拠出年金について必要な事項を定め、国民の高齢期における所得の確保に係る
自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に
寄与することを目的とする。


URL:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H13/H13HO088.html


つまり、個人や企業が出したお金を自分の責任で運用し、公的年金(国民年金や厚生年金)の足しにする為、
自分で努力してその原資を確保してください、といういわゆる”私的年金”にあたる制度になります。

公的年金と何が異なるのかと言えば、
自分で努力して運用してください
という点に尽きます。

ですが、自分で運用して年金を積み立てるならわざわざ国が用意した制度を利用しなくても
証券口座を開設して投資信託や上場企業の株を買ったり、
個人向け国債や定期預金で運用すれば良いはずです。

しかし、確定拠出年金制度の良い所は色々な税制のメリットがある点です。


税制のメリットは個人が掛け金を出すか、企業が掛け金を出すかで若干異なります。



【企業型】

■拠出時
 事業主拠出分:全額損金算入(拠出額全額が費用として認められる)
 加入者拠出分:全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)

■運用時 
 積立総額:特別法人税課税(1.173%)(現在凍結中)
 運用収益:非課税

■給付時
 1.年金として受給:公的年金等控除
 2.一時金として受給:退職所得控除


【個人型】

■拠出時 全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)

■運用時 
 積立総額:特別法人税課税(1.173%)(現在凍結中)
 運用収益:非課税

■給付時
 1.年金として受給:公的年金等控除
 2.一時金として受給:退職所得控除





ここでは加入者個人の話を理解すれば大丈夫です。
自分で掛け金を支払った場合は全額が所得控除を受けられるという事です。


所得控除という事は、掛金に対して最低でも所得税で5%、
住民税で10%の税額が減らせることになります。
(控除できる所得がある事が前提となります)


例)課税される所得の金額が100万円の人で、
  年間の掛け金額が20万円だった場合


<本来の税額>

所得税:100万円×5%=5万円
住民税:100万円×10%=10万円

合計15万円


<所得控除後の税額>

所得税:(100万円-20万円)×5%=4万円
住民税:(100万円-20万円)×10%=8万円

合計12万円


所得控除による税額軽減効果:15万円-12万円=3万円(20万円に対して15%)

※住民税の均等割りは加味していません


となるわけです。


また、運用時の利益に対しては非課税となります。
例えば現在の証券税制では利益に対しての課税率は10%(平成26年以降は20%)となっており、
これが掛からない事になります。
(ただし、特別法人税課税が再開される可能性はゼロではありません)

加えて、将来給付を受ける時に一時金として受け取るか
運用後の積立金総額を原資にして年金として受け取るかの選択ができるのですが、
この時も公的年金等控除や退職所得控除など大きな所得控除のメリットが用意されています。


この様に、確定拠出年金制度は私的年金制度としてはかなり魅力的であり、
税制面におけるバックアップを十分に活用できれば公的年金の不足分を
ある程度補うことが出来る便利な制度です。


しかし、加入出来る者が限られており、個人での拠出に関しても一定の制限があります。
更に、確定拠出年金制度にもいくつかのデメリットがあります。


厚生労働省のサイトから確定拠出年金制度のデメリットを抜粋してみましょう。



【参考】「確定拠出年金制度の概要」(厚生労働省)
URL:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html

【デメリット】
 ・投資リスクを各加入者が負うことになる。
 ・老後に受け取る年金額が事前に確定しない。
 ・運用するために一定の知識が必要。
 ・運用が不調であれば年金額が減る。
 ・原則60歳までに途中引き出しができない。(退職金の代わりにはならない)
 ・勤続期間が3年未満の場合には、資産の持ち運びができない可能性がある。
 ・加入者ごとに記録の管理が必要になるため、管理コストが高くなりやすい。



「自己の責任において運用」する事が確定拠出年金制度の本質ですから、
当然ながら、運用に失敗すれば受け取れる年金額が拠出額以下になる事もあるわけです。

仮に専業主婦が加入できるようになった場合、自分で運用するにあたって
ある程度の運用知識が必要になります。

企業型であれば企業側が継続的に投資教育を実施してくれる場合もありますが、
個人の場合は自主的に勉強を続ける必要があります。
つまり資産運用の知識(金融リテラシー)を学ぶための時間というコストが掛かります。


加えて、確定拠出年金の運用口座は定期的な費用(口座管理手数料や給付事務手数料等)が掛かります。
また、購入した投資信託に発生する費用(運用管理費用等)も負担する必要があります。

掛金は途中で引き出しできず、退職や再就職時にも手続きが必要になる場合があります。

上記では挙げられていませんが、専業主婦で所得が無い場合は還付する税金が無い為、
所得控除のメリットを受けられないという点も留意する必要があります。

公的年金控除や退職所得控除は現行の法制度化では有利な面があるものの、
将来に渡って同一の控除が受けられるかどうかは分かりません。


運用収益に対する非課税措置や受取時の各種所得控除があるとは言え、
毎年の所得控除が受けられない点で上記デメリットを補って余りあるかどうかは
判断の付かない所ではあります。
(住宅ローンを組成する予定であれば手元に現金がある方がメリットとなります。)


ただし、途中引き出しができないというのは手元にお金があるとつかってしまう人にとって
強制的な天引き制度として利用すると考えれば逆にメリットとなりえます。

また、現在専業主婦に与えられている私的年金制度は民間の個人年金保険しかなく(※)、
元々制度が手薄だった為、選択肢が与えられる事はこれ以上ないメリットと言えるでしょう。


このように、自分の将来がどうなるのか、どうしたいか、
いわゆるライフプラン(将来の生活設計)やファイナンシャルゴール(必要額の目標)を
しっかりと考えたうえで制度を利用するべきかどうかを判断する必要があります。

つまり、利用するにせよしないにせよ、ある程度の生活上必要な知識
(税金・金融商品・社会保険・その他各種リテラシー)を知る努力をしなければならない点で、
仮に制度が導入されるのならばこれを切っ掛けとして学ぶ機会ができ、
結果的には自分の生活上のリスクを低減させ、質の向上につながるものと考えています。


現状では何も決まっていませんが、
これからの時代、"私的年金"づくりはとても大事な事なので
気になった方は今から少しずつでも勉強していきましょう。



※専業主婦でも利用できる日本版ISA(導入から3年間で毎年100万円までの上場株式、
 投資信託投資に係る非課税措置)については、23年度税制改正大綱において、上場株式
 等の配当・譲渡所得等の20%本則税率化に併せて、経済金融情勢が急変しない
 限り、平成26年1月に導入することとされている。(下記資料2・3P抜粋後加筆)

【参考】「民主党成長戦略・経済対策PT説明資料
    (「成長ファイナンス戦略」‐日本再生へ向けた成長マネーの供給拡大策-(中間報告))」
URL:http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive07_02.html#haifu

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Author:楽天家業

 大学在学中から事業でお金を貯め、それを元手に卒業後は個人トレーダーとして生計を立てていました。(現在はトレード業務一部復活)

 2008年のリーマンショック時に信用取引による過剰リスク状態で惨敗。そんな手痛い経験もあり、このままの人生で良いのかと自分を見つめ直し、同年からウェブサイトの作成業務、2009年からは独立系FPとして相談業務を行うため、自分の経験を活かして日夜、ファイナンシャルプランナーの分野で活動を行っています。

<略年表>
2009年9月AFP登録
2011年7月CFP登録

 現在、主にFP法人様や執筆関連でお仕事承っております。

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