確定拠出年金を悩ます特別法人税 立法趣旨と今後の展開

確定拠出年金の話題が上ると必ず特別法人税の話が出てきます。

これは、積立られた残高に対して一定の割合で税が課されるというものですが、
その税率が国税1.0%、地方税0.173%の合計1.173%という、
超低金利時代の現代では考えられないほどの高率となっている為、
平成11年度から現在まで、制度はあるのに凍結され続けているわけです。

この法律は元々適格退職年金制度が創設された昭和37年(1962年)に作られたもので、
根拠法は法人税法第83条他で規定されており、税率も以下のような条文で決められています。


法人税法第87条(退職年金等積立金に対する法人税の税率)

内国法人に対して課する退職年金等積立金に対する法人税の額は、
各事業年度の退職年金等積立金の額に百分の一の税率を乗じて
計算した金額とする。



そして現在は租税特別措置法第68条の4によって、
上記退職年金等積立金に対する法人税の課税は停止されている状況です。


しかし、定期預金に預け入れるだけで数パーセントの利息が付く時代とは異なり、
上記の固定金利水準を得ようとすれば、償還期間が15年物の国債を買う必要があり、
そのような商品が固定利付債が提供されているわけでもない為、
とても現実的とは言えない状況となっています。

そもそも特別法人税を課税する立法目的とはなんだったのでしょうか?
具体的には以下の資料を見る事である程度当時の状況が把握できます。


【参考】(季刊・社会保障研究Vol.34 No.2(1999年3月発行)国立社会保障・人口問題研究所)
退職年金等積立金に対する法人税の立法趣旨をめぐって」(PDF)


上記資料内の1ページ目の文章を引用すると、当時の税制調査会(1961年)では、


「年金について従業員の受給時まで課税しないこととするときは、企業拠出部分及び運用益部分について非課税の「たまり」ができることとなる。(中略)企業拠出部分と運用益部分についてなんらかの課税を行うべきことが結論として導き出される。

 そこで、従業員の所得としての課税は、年金受給時に置いてすることとし、その間の課税の繰り延べによる利益、すなわち、税金の納付を延期する為の利息に相当するものを、その年金基金に対し、特別の法人税として課税しる事が適当と考えた。」

(引用終わり)


と記載されており、確定拠出は企業拠出部分が主流ではあるものの、
マッチング拠出を導入した本年1月以降に置いて上記と同様の措置を取る事自体に
問題があると考えるのが自然です。

また、確定拠出年金は他の企業年金とは異なり拠出後の受取額は運用結果によって左右される為、
最終的に運用益が生じるかどうかは不明である事を考えれば、
遅延利息の源泉そのものが存在しない可能性もありうるわけです。

加えて、上記資料内(p198 2.運用益課税の角度からみた特別の賦課)
においても語られているように、単年度の収益結果を持って課税するのであれば、
それと並行して損失が発生した場合は複数年度に渡って通算する制度の導入が無ければ
その他の課税方法との合理性が失われるとも言えることができ、
この面でも現行法上のまま凍結を解除する事に問題があると考えられるわけです。


以上により、最終的に何かしらの課税を導入するとしても、
課税額を引き下げるか、一定額の残高までは非課税とするか、
定率課税をやめて新たなシステムを導入する可能性は否定できません。

もちろん1年物の定期預金金利が数パーセントレベルで安定するような世の中であれば
現行のまま復活させる可能性はありますが、この状況下ではそれも考えにくい為、
結局は凍結して先送り、という流れが妥協の産物として
正当性を持っている事は察しておく事にします。
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非公開コメント

これも時代遅れ?

これも時代遅れの産物だと思いますね。
厚生年金基金制度ができた1966年当時と今を単純比較するような制度かも知れません。
時代時代にあった制度にして欲しいと思います。

No title

碌に法改正なしに来てしまってますからね。。。
余程の事が無い限り、放置される可能性は高いのでしょうけど、
いつまでも中途半端に残すのも気持ち悪すぎますし、
同じく、早期の法改正を望みたい所です。
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プロフィール

楽天家業

Author:楽天家業

 大学在学中から事業でお金を貯め、それを元手に卒業後は個人トレーダーとして生計を立てていました。(現在はトレード業務一部復活)

 2008年のリーマンショック時に信用取引による過剰リスク状態で惨敗。そんな手痛い経験もあり、このままの人生で良いのかと自分を見つめ直し、同年からウェブサイトの作成業務、2009年からは独立系FPとして相談業務を行うため、自分の経験を活かして日夜、ファイナンシャルプランナーの分野で活動を行っています。

<略年表>
2009年9月AFP登録
2011年7月CFP登録

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