決算情報漏えいで利益を得てもインサイダー取引に該当しない不思議

【参考】決算情報:公表前に投資家らサイトで閲覧 証取委が注意(毎日新聞)


上場企業が決算情報など株価に影響を及ぼす重要情報をインターネットで公表する直前に、
複数の投資家がホームページの管理サーバーに保存されたデータに直接アクセスして
情報を閲覧し、株取引をしていたとみられることが、
証券取引等監視委員会などの調査でわかった。(中略)

 公表前に会社のホームページを管理するサーバーに保存された情報は、
専門ソフトを使えば誰でも見られるようになっており、
パスワードの設定がないなどずさんな情報管理をしていた企業もあったという。



各報道機関では「専門ソフト」という表記が成されていますが、
恐らく、ウェブサイトのファイル構造を階層表示して閲覧できるフリーソフトを利用して
決算が公表されるページのURLアドレス下に特定のワードが含まれるPDFファイルが
サーバー内にアップロードされていないかどうかを確認していたものと思われます。


とは言え、単純にサイト内にリンクが張られておらず、パスワードが不必要な
セキュリティの甘いフォルダにファイルがアップロードされている状態であれば、
上記フリーソフトを利用しなくても簡単にPDFファイルを
閲覧することが出来ます。


例えば以下のような企業のIR公開ページがあるとします。




2013年3月期・第3四半期の連結決算短信のPDFファイルのURLが以下の通りだったとします。



URLはウェブ上の住所のようなものですから、
このURLアドレスがとても大事になってきます。

上記アドレスをフォルダの階層構造で表示してみます。



この図を見ても分かるように、
最終的に「pdf」フォルダに2013年3月期・第3四半期「tanshin130206.pdf」
というPDFファイルが置かれている事が分かります。

では、この会社の2013年3月期通期のPDFファイル名はどうなるでしょう?


2012年3月期通期が「tanshin120501.pdf」であり、
この決算の発表日が2012年5月1日とします。

仮に2013年3月期通期の決算発表予定日が2013年5月1日と公表されている場合、
PDFファイル名は「tanshin130501.pdf」とされるだろうと推測されます。

つまり、当該ファイルを閲覧する為には、
URLアドレスに「http://www.○○○.co.jp/corporate/ir/pdf/tanshin130501.pdf」
とするだけで、ファイルが実際に上記「pdf」フォルダ内に閲覧制限もかけずに置いた場合、
誰でも見ることが出来てしまうわけです。


このような簡単な手法で見れてしまうものを、サーバー側にセキュリティ対策なしに
アップロードしてしまっていた事自体はとてもお粗末な話であり、
市場の公正取引上とても残念なケースと言えるでしょう。


所で、何故これでインサイダー取引に該当しないのでしょうか?
そもそも、何故企業は自社のホームページに決算情報を
アップロードしておくことに問題があるのでしょうか?


通常、上場会社の決算情報等重要事項の開示は、
東証が管轄する適時開示情報閲覧サービスへの掲載(TDnetシステム経由)
が第一となっており、企業側HPでの開示はその後の対応となります。

何故そのような対応を取っているかと言うと、
開示後に投資家が平等に情報を知り得る機会が与えられている必要がある為です。

また、旧証券取引法(現金融商品取引法)施行令第30条(いわゆる12時間ルール)改正時、
取引所等における重要事実の公衆縦覧(東証のHP等(適時開示情報閲覧サービス))
が、開示情報のインサイダー取引規制の解除要件とされたことも
影響しているものと思われます。

【参考】インサイダー取引規制における公表措置金融庁(PDF)


これにより、企業IRのディスクロージャーポリシー(開示方針)には
以下のような文章が書かれている事が多いです。

【参考】アサヒグループホールディングス

<情報の開示方法>

適時開示規則に該当する重要情報の開示は、同規則に従い、
同取引所の提供する「TDnet システム」に登録します。
登録後、速やかに報道機関に同一情報を提供すると共に、
弊社ホームページ上にも同一資料を掲載します。



このように、"登録後"HPへの開示をする事が当然の中、
複数の会社で保存先フォルダにパスワードを設定していない等の理由により
誰でも閲覧可能な状態になっていた状況だったようです。


では、なぜ公開前情報を閲覧してもインサイダー取引に該当しないのでしょうか?
これは証券取引のルールとして導入されている金融商品取引法を見てみると分かります。

まず、大阪証券取引所のインサイダー取引に関する規定見てみましょう。

【参考】のインサイダー取引について(大阪証券取引所)

ここにはインサイダー取引の構成要件として、
以下の図が書かれています。

※大証HPから引用



今回のケースでは、一般投資家が上記情報を知り得て数十万円の利益を得たとされています。
つまり、事件の内容を上記構成要件風にまとめると、

だれが?「一般の個人投資家」
いつ?「適時開示情報に掲載前に」
なにを?「未公表の重要事実を知り得てそれを元に利益を得た」


となります。


「一般の個人投資家」は会社関係者や元関係者ではありませんから、
本来であれば「情報受領者」に該当します。

ただし、情報受領者に該当するには更に条件があり、

1.会社関係者から重要事実の伝達を受けた者
2.職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって、
  その物の職務に関し重要事実を知った者


※下記参考資料p.168抜粋


とされており、会社関係者から直接的に「伝達を受けた者」に該当しないため、
インサイダー取引規定による処罰は難しい、とされています。

とてもおかしな話ですが、ルール上の盲点を突いたやり方であり、
問題とされない以上何を言っても仕方ありません。

市場の公平性を保つ為、今後は法令改正も含めて検討して頂きたい所です。


【参考資料】基礎から学べる金融商品取引法 第2版(※アマゾン)
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Author:楽天家業

 大学在学中から事業でお金を貯め、それを元手に卒業後は個人トレーダーとして生計を立てていました。(現在はトレード業務一部復活)

 2008年のリーマンショック時に信用取引による過剰リスク状態で惨敗。そんな手痛い経験もあり、このままの人生で良いのかと自分を見つめ直し、同年からウェブサイトの作成業務、2009年からは独立系FPとして相談業務を行うため、自分の経験を活かして日夜、ファイナンシャルプランナーの分野で活動を行っています。

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2009年9月AFP登録
2011年7月CFP登録

 現在、主にFP法人様や執筆関連でお仕事承っております。

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