REITの利回りが大幅に低下中 過去の利回り変遷と適正価格

今年に入ってREIT(不動産投資信託)の株価が急上昇しています。


株価指数ヒストリカルグラフ -東証REIT指数-(東証)


REIT(Real Estate Investment Trust)とは、
投資家から集めた資金を不動産に投資するファンドの事で、
そこで得た収益を投資家に9割以上分配する事を条件に法人税が免除される等、
税制面でのサポートもある仕組やその金融商品の事です。

2001年9月には東京証券取引所に証券化された株式が上場、
他のトヨタやソフトバンク等の株式同様、
証券会社を通じて購入・売却が容易に行えるなど、
個人が実物資産を直接取得する事なく手軽に不動産に投資できる商品として
比較的多くの投資家に売買されています。

そのような経緯のあるREITですが、上記のように過去3か月で50%近い上昇を見せるなど、
本来の不動産では少し常識的に見て想像できない株価の動きをしています。

ちなみに、REITの資産価値を表す指標として"時価総額"と、
ファンドから定期的に受け取れる配当を株価で除した"配当利回り"がありますが、
その時価総額と配当利回りも急激に変動している現状を
次の資料で見てみましょう。



一般社団法人不動産証券化協会の以下のレポートによると、
J-REIT全銘柄の平均配当利回りの推移は以下の通りとなっています。

【参考】10年を迎えるJREIT 市場のこれまでの歩みと今後(みずほ証券)(PDF)





今までの最高値が9.68%、最低値が2.5%程度です。


ただ、数字だけ見せられても何が適正化の判断が分かりずらい所ですから、
野村総合研究所の資料から、仮にREITが保有するような大規模な実物不動産に投資した場合、
どの程度の利回りが得られるかを見てみると、見てみましょう。



※【参考】日本の不動産投資市場の概況(日本市場のパフォーマンス推移)(野村総合研究所)抜粋



これを見ると、インカムリターン(Income Return)、
つまり、不動産から得られる定期的な賃料収入が、
物件価格の約5%程度で推移している事が分かります。


では現時点のREITの利回りはどのくらいあるのでしょうか?
不動産投信情報ポータルサイト「JAPAN-REIT.com」によると、
全REITの平均予想利回りは3.49%となっています。


つまり、通常なら5%程度が適正水準と言える配当利回りが
株価の上昇で大幅に低下傾向にあり、過去の推移から見ても3%台は
あまり投資先として魅力のある状況ではなくなっている事が分かります。

ただし、将来の賃料収入が上昇すれば配当利回りは改善される事になりますから、
現時点の株価の水準が適正かどうかという所までは判断できません。


では、今度は時価総額ベースから見てみましょう。


現在の全REITの時価総額合計は約6.7兆円で、
07年5月に記録した6.8兆円(※)とほぼ同水準まで来ています。


※過去の月別時価総額推移はこちら
 「J-REIT市場の概況(J-REIT時価総額)」(不動産証券化協会)


上場銘柄数は07年5月当時が41銘柄、現在が37銘柄ですから、
1銘柄辺りの時価総額ベースでは既に07年を超えている事になります。

ただし、REIT自体が保有する不動産の総額が異なります。
用途別保有不動産額の推移(※)を見ると、07年5月が5兆9,835億円であるのに対して、
12年12月は9兆523億円(取得価格ベース)ですから、その差は1.5倍ほどにもなります。


※過去の上場銘柄数と用途別保有不動産額の推移はこちら
 「J-REIT市場の概況(用途別保有不動産額等)」 (不動産証券化協会)


上記の数字を見て、現在のREITが保有する不動産が9兆円もあるなら
時価総額6.8兆円は安いのでは?と思った方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、REITは基本的に投資家から集めたお金+銀行からの借り入れ等を行う事で
不動産の取得を資産額より多く行う事で利回りを高めていますから、
当然ながら各REITの負債を差し引かなければ実際の純資産は出せない事になります。

ちなみにREITのような不動産証券化商品の指標として、
保有する物件の総額に占める負債の比率の事をLTV(Loan To Value ratio)と言うのですが、
上場REITの平均LTVは11年8月時点で47%(※)と言われています。

【参考】10年を迎えるJREIT 市場のこれまでの歩みと今後(野村証券)(PDF)


12年12月もおおよそ50%と仮定すればREIT全体の負債を除いた純資産は約4.5兆円ですから、
現在の時価総額6.8兆円はPBR(株価純資産倍率)で表すと1.5倍ほどとなり、
純資産を超える価値判断がなされている事になります。

ただし、07年5月のPBR2.2倍水準よりはまだマシと言える水準とはいえるかもしれません。


※10年を迎えるJREIT 市場のこれまでの歩みと今後(みずほ証券)抜粋


以上の事から、過去REITバブルと呼ばれた07年当時の水準と比較してみると、
時価総額ベースではまだ判断できないものの、配当利回り水準が今後、
2%台に入るような状況が生まれるようなら、かなり危険性が出てくると
思っておいた方が宜しいかと思います。
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Author:楽天家業

 大学在学中から事業でお金を貯め、それを元手に卒業後は個人トレーダーとして生計を立てていました。(現在はトレード業務一部復活)

 2008年のリーマンショック時に信用取引による過剰リスク状態で惨敗。そんな手痛い経験もあり、このままの人生で良いのかと自分を見つめ直し、同年からウェブサイトの作成業務、2009年からは独立系FPとして相談業務を行うため、自分の経験を活かして日夜、ファイナンシャルプランナーの分野で活動を行っています。

<略年表>
2009年9月AFP登録
2011年7月CFP登録

 現在、主にFP法人様や執筆関連でお仕事承っております。

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